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土とやすらぎの長谷村

 真っ青な空の下、リンドウを収穫しながら、ふと顔を上げると心地よい涼風が、ほおをなでる。『あっ!!この風を筆にとって紙になぞると、きっとこのリンドウの色になるんだわ』。思わぬ発見に農作業が楽しくなった。二十八年前、一頭の子牛を連れて、ふもとの伊那市御園からこの地に嫁いで来た私。子供の頃から、自然の中で、四季の風情や時には自然の厳しさを周りの大人たちから教えられながら育ってきた私にとって、振り返ればこの長谷村の空気は、『本当の私』を創り出してくれたのではないかと思う。今、我が家には今年で四年目となるフランスの農業大学の女学生ステファニーをはじめ茨城、鳥取、島根、広島、京都、大阪から若者たちが農業研修に来ている。夏休みを利用して県内の農業高校からも体験学習に来た生徒たちも数多い。若者たちに農業にふれてもらい、農村の良さ農山村のもつ役割り、農業にかける私の情熱を、交流を通してもっと知ってもらい理解を深めることが、私の努め。
高校生は、ほとんどが農家の出身だが、農家の楽しさも厳しさも知らずに家に来る。そんな子供達と寝食を共にすれば、一人ひとりの子供たちの家庭が手に取るように見えて興味深い。気配りの出来る子、明るく素直な子、そうでない子、何でもマイナスの方向へと考えてしまい私自身が考え込んでしまいそうになってしまう子など。しかし、日一日と長谷村の空気を吸っていくごとに言葉ではなく、子供たちの瞳がみな、一様に輝きを増してくるから不思議だ。
研修一日目は、まず基本になる『土』の事を知ってもらう。当黒河内花卉組合代表で夫の信念『死んだ土からは、生きたものは生まれない』に基づいて話をする。『いったい土は、どのくらい元気なのか』と。
南アルプスの玄関口にあって今なお変わらない澄み切った空気と、三峰川の豊かな流れは、私たちのかけがえのない宝物。先日、上京した際、土の匂いの全くない都会の暮らしぶりを目のあたりにして『このままでイイのかなあ。ヒトが住む場所はやっぱり”土”がなくては…』と思わずにはいられませんでした。同時に私は信州長谷村で、おいしい空気と、心安らぐ土の香りを満喫しながら生きていることの幸せを実感したのです。私が嫁いで来た頃の長谷村は、道路は車が通るたびに土ぼこりをあげていましたが、子供たちの遊び場所は大自然の中。学校の行き帰りも、ワクワクするような、自然との出会いがいっぱいありました。今は、大人も子供もワクワク、ドキドキするような”出会い”を忘れているようです。いや、知らないのです。
土の香りと、自然のおいしい空気を体に満たし、人間らしい生き方を模索することができる暮らし。フラワーポケットと山村体験や農業体験のできるみらい塾で、その役をスタッフとともに担って行こうと夢をふくらませております。


 
 
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