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こんなところで休めたらなあ

「こんなところで、やすめたらなあ」
というつぶやきが気になって、蔵を改造しました。


アルストロメリア大好きの花狩りのお客さん達
 28年前、牛を飼うことを結婚の条件に、標高900mの南アルプス山麓の村の夫の元に、一頭の子牛を連れて嫁いできた私。実家の両親も婚家の両親も、農業に携わることに誇りを持ち、常に夢を描きながらやってきた人達でした。加えて市ノ羽家は、築100年余り。いろりのある110坪の母屋と、二棟の蔵。堂々たる風格の「農家」でした。山間地ですが、今なお変わらない澄み切った空気が、私の夢実現のための大きな支えとなってくれています。
 牛もシイタケも米もやめる方向で、花栽培に転農したのは平成元年。この土地が、南米のチリやペルーが原産のアルストメリアの栽培に適していたことが要因でした。アルストロメリアの和名は「夢ゆり草」。花言葉は『未来への憧れ」。何だか嬉しい気分でした。アルストロメリア40aリンドウ110a、その他の花も入れて延べ200aの花栽培をスタート。
 5年前には法人化して、三軒で(有)黒河内花き組合を設立。当時夫50歳、私45歳。三人の子供もそろそろ自立。スタッフも農業をいろいろな分野から論じあえる若者や女性が、一人二人と増え、将来へ向けて明るい希望が持てるようになってきています。  いままで観光農業『フラワーポケット」の愛称で親しまれ、通年、アルストロメリアの花狩りのお客様が足を運んでくださいます。花狩り客も年間400人となり、生産中心の農業からお客様と直接触れ合うことができる「楽しみながらできる農業」に夢をかけ始めております。  毎年、3月の最終日曜日がフラワーポケットの花まつり。秋にはアルストロメリアコンサート。こういうイベントを定期的に開くことで、農業の一面を知って頂いております。お気に入りのアルストロメリアを好きなだけ、はさみで収穫したり、蔵の庭先にしつらえた特設ステージの郷土芸能に拍手を送ったり、地元のおばあちゃんらが料理する行事食に舌鼓を打ったりして楽しいひとときを過ごして頂きました。ちなみに今年はガーデニングブームからか、当組合の堆肥が人気を集め、担当の主人が説明に大忙しでした。人が人を呼んできてくれ、民宿のほうにも特に宣伝しておりませんが、ここのところお客さんが増えてきました。 


ネズミの住みかだった蔵が、民宿によみがえる
 「夢ゆり草」と命名した味噌蔵(10坪)、「山ぼうし」の本蔵(20坪)。両蔵ともわが家が稲作から花き農家に変わったことで不要となり、ネズミの住みかから「農家民宿・みらい塾」に生まれ変わったものです。
  蔵を改造するきっかけになったのも、フラワーポケットに来てくださるお客様を古い屋敷内にご案内した折の、「何も考えないでこんな部屋でゆっくり休みたい」との一言でした。それ以来、特にバリバリ仕事をこなしていらっしゃた中高年の方々がふと漏らしす、ため息まじりのそんな言葉が妙に気になりだしたのです。  民宿かあ・・・と考えてみると、
(1)花つくりを生かしてできる仕事 
(2) 心を癒す花達と一緒 
(3)村の活性化につながる 
(4)私自身が居ながらにして異業種交流ができる・・・。
何だか利点ばかりです!
  さっそく、隣村に住む農家民宿の大先輩・伊藤和美さん(60)に相談。的確なアドバイスを頂きました。さらに、かねてからフラワーポケットを支えてくれている人達の中に、林業・木造建築に詳しい大工さんや電気工事屋さんが数人いたことが幸いし、トントン拍子にことが運びました。
  平成8年7月8日、まず小さいほうの蔵の改造に着工。祖父の代からの蔵のなかにずっと眠っていた品々をかたづけがてら、初めて見る機会に恵まれました。夜なべ仕事で、ほこりにまみれた階段ダンスや引出しのある食卓、旧式ラジオなど、古き懐かしき家具や藍染めの付けの食器などをきれいに洗ったり拭いたりの作業。昼間の農作業で疲れていても、明治・大正時代の超掘り出しものが出てくれば、時間のたつのも忘れて頑張りました。中でも、美しく彩色された「錦絵」(明治時代のもの)が十数枚出てきたのにはビックリ。娘が嫁いだ先の舅が趣味の木工技術を生かして額をつくり、さらに各絵の解説文を書き添えてくださいましたので、本蔵の「山ぼうし」の壁面に飾りました。


総工費250万円 備品のほとんどはもらいもの
  一応、旅館業になるために、農家民宿に必要な「簡易宿泊所」の認可を申請。保健所、役場、消防署などの関係機関に指導に来てもらい、許可はおりました。経費は、両蔵の内装・電気・大工手間代、風呂場、外回り含めて、総工費250万円。水道工事はすべて夫が担当。その他多くの人が手弁当で得意分野の力添えをしてくれました。
  茶ダンスも時計も、備品はほとんど頂きもの。流し台は大工の友人がどこかの解体現場で確保してくれたものを、綺麗に磨いて蔵の横につけました。サワラの木を安く提供してくれた人がいたので、最高のお風呂ができましたし、電気の傘も木で造ってくれた人がいます。
  手伝ってくれた方々は、「自分で利用しい」と思いが基本のようです。それぞれの人が、「この空間を共有したい仲間達です」とかいいながら、紹介の輪が広がっております。心地よいと感じた方が、大切な人を連れてきてくださるのが、一番と思っています。
  食事の提供もしていますが、食事の材料は持ち込み可能で、蔵の中ので料理ができるように備品を整えてあります。


年金と、ここでの上がりでのんびりと老後
  昨年は一年で80人くらいの方が泊まっていきました。時間に縛られることなく静かに自分を見つめる青年や、いつもと違った時間の使い方をしてみて家族とのあり方を考える主婦など、私も忙しい中ですが、まったく違った環境に生活している人との交流は、様々な情報を提供してもらえる上に、発想の転換やヒントも与えてくれるので、来客は苦になりません。いずれ歳をとったら、経営は次世代に譲り、私とお父さんと二人、年金とここの上がりでのんびりと暮らし、孫に小遣いをやれるくらいになればいいなと思っています。
「元気をもらいに、また来ます」「夢や希望で心がいっぱいになりました」と感想を書いてくれる若者らと出会えるのは素敵なことです。元気を取戻した人は、自ら「お手伝いすることはありませんか?」と必ずいってくれます。初めてのお客様も自然に分担して得意料理などつくっております。
  ここに来られて、それぞれの人が自分サイズの「心の豊かさ」に気づいてくだされば、最高のおもてなしではないかと思います。


 
 
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